「無茶なことしますね」

以前、南西の強風が吹いていた中で、
レースボードでアップウインドを漕いでいた時に言われた言葉。
その方はウインドサーファーでSUPもやる。(仮にAさんとしよう)
海の上でAさんはウインドしながら近寄ってきて声を掛けてきた。

僕もずっとウインドサーフィンに携わってきたし、
逗子はウインドサーフィン優先だってことは、もちろん理解しているから
周りのウインドサーファーの方の邪魔にならないように意識はしていた。
(それでも邪魔をしていたとしたらごめんなさい…)

確かに風が吹いていて、ウインドサーフィンにはGOODコンディション!
SUPには風が強すぎて(風速10m/sくらいのオンショア)
大半の人は見向きもしないコンディションだったけれど、
僕にはSUPでダウンウインドをしたいっていう目的があったので、
そのためには向かい風を漕いで行かなければいけないのだった。
そして、いざ漕ぎだしてみると意外と強風の向かい風も楽しかったりする。

そう言えば、レースボードで波乗りをしていた時も
Aさんに
「そんな長い板で波乗っちゃダメですよ」
って言われたのを思い出した。
レースボードのような大きなボードが周りの人へ与える危険性も分かっているから、
人が多いところには近寄らないし、
自分がコントロール出来るサイズの波の時しかレースボードで波乗りはしない。

Aさんは確かに小さいボードに乗っていて、
バランス取れずに波間でコケていた。
僕は波に乗っていて、Aさんは僕のラインから避けることもなく、
邪魔をした挙句に謝るのでもなく、そんなことを言っていた。

僕は最近SUPフォイルを始めた。
これも周りにはかなり配慮しているつもりではいるんだけど、
きっとまた何か言われると思う。 笑

話変わって、先日リアルウォーターマンな方のお話を聞く機会があった。
衝撃だった。
僕はSUPやウインドサーフィンを真剣に取り組んでいるつもりだったが、
それはレジャーの延長だったことに気がついてしまった。
ウォーターマンな方は、言葉通り命を懸けて新しい事にチャレンジをしていた方だ。
もちろん死んでしまっては元も子もないので、
そのためのリスクヘッジ、マインドセットの重要性などを簡単にお話してくれた。

南西の強風の中で海に出られるウインドサーフィン。
僕はずっと大冒険だと思っていた。
だけど冷静に考えれば浜はすぐそこ。
いつでも日常に戻ってこれるちょっとの冒険だ。
もちろん自然相手だから油断は大敵だけど。

SUPで逗子湾の中をオンショアに向かって漕ぐことは、
ウインドサーフィンよりも自力で進まないと行けない分、
ほんのちょっとだけ冒険感が増す。少なくとも僕にとっては。
だけど結局は逗子湾に守らていて自分が諦めたら風に流され浜に着くだけ。
こっちも日常と隣合わせの小さい冒険に過ぎない。

断っておきたいのは、
命を懸けて冒険することに尊敬はするが、
推奨しようとも、偉いとも思っていない。
ほとんどの方はSUPやウインドサーフィンにそれを求めていないし、
スイッチスタンスもレジャーの延長で楽しみたい方のためにある。

楽しみ方は一つではなく、その人の心の中にあって
何を楽しいと感じるかは、人それぞれだってこと。
僕とAさんは所詮、日常と隣り合わせの冒険しか出来ない同じ世界の人間だ。

今度、声を掛けられたら言ってみようと思う。
「僕らはいつも無難なことしかしてませんね…笑」って。